「引き寄せられたんです」
守が口にした言葉に、桃と春彦は目を瞬かせた。
「みーちゃんに再会できたのは、偶然ではなく必然ではないかと」
「奇跡って言いたいんでしょう?」
「そうなのかもしれません。神様が引き合わせてくれたんじゃないかって」
「きっと、そうに決まってるよ」
春彦は穏やかな顔で、何度も何度も深く頷いていた。
「僕は幸い、環境にも恵まれ仕事も順調でした。でも心の平安は、訪れなかった」
守は、美優が忘れられない女性だと口にした。
「忘れられないって、どういうこと?」
桃が首を傾げた。
「みーちゃんは、僕の…初恋相手です」
「まあ、素敵!」
桃の目が宝石のようにきらきらと眩しい。
「ふらふらと街を歩いていたら、この店に辿り着いて。
気付けば僕は、ドアを開けていました」
「巡り合わせよ!みーちゃんと平田さんは、互いに引き寄せられる体質なのよ!」
「引き寄せられるのって…体質なんですか?」
守は怪訝そうに桃を見た。
「桃、意味不明なんだけど?平田さんが警戒してるじゃないか」
「つ、つまり!運命に引き寄せられた、ふ、た、り、ってこと!」
桃は得意げにウインクしたが、隣の春彦は呆れ顔だった。
「平田さん、気にしないでくれ。
桃は突然意味不明なことを言うが、聞き流せば済むことだ。
俺もそうしてる。日常茶飯事だからな」
すると桃は、ハリセンボンのように頬を膨らませてじっとしている。
「あの…本当にいいんですか?桃さん、拗ねてますよ?」
「ああ、いつものことだ。気にするな」
「いつものことなんだ…」
不思議な夫婦だな、と守は思った。
ハリセンボンのように頬を膨らませている桃の頭を、春彦は優しく撫でている。
「拗ねるなよ。な、桃?」
春彦は、よしよしと桃の頭を撫でた。桃はまだ拗ねている。
「初恋相手ってことは…一目惚れか?」
「それもあります。けど…」
「けど?」
「みーちゃんは、幼馴染なんです」
守は児童養護施設『キユウ』で育ったこと、そこで幼い美優に出逢ったこと、
心も体も弱い美優をずっと守ってきたことを話した。
「そうだったのか…」
「みーちゃんは、いじめられることが多くて。
だから、僕が守ってあげなきゃって思ったんです」
大人しい美優は我慢することしかできず、声を上げることもままならなかった。
美優はいつも孤独で、一人遊びをする子だった。誰とも関わろうとしなかったのだ。
「最初は僕とも、話そうとはしませんでした。でも僕は根気よく話しかけた。
危険にさらされそうになった時は、真っ先に駆けつけて守ったんです」
いつもヒーローの如く守ってくれる守に、美優はいつしか気を許すようになっていた。
美優の世話をするうちに、守は美優に次第に惹かれていく。
「でも、なかなか気持ちを伝えることはできなくて。
そうこうしているうちに、みーちゃんは僕の前から姿を消したんです。別れも告げずに」
「えっ?どういうことなの?」
桃が身を乗り出して言った。春彦は桃の様子を見て微笑んだ。
「その前に、みーちゃんがここに来た時の話、聞かせて下さい」
美優がどうしてこの喫茶店に辿り着いたのか、守は知りたかった。
「それが、不思議なのよねえ」
「不思議?」
守が言葉の真意を探るように、桃を見つめた。
「みーちゃんは、いつも突然すぎるのよ。ある日突然、現れたんだから」
美優は親戚である桃が春彦と喫茶店を開いていることをどこかで知ったらしく、
生まれ故郷からこの東京へ、桃を頼って上京してきたという。
どこにも居場所がなく行く宛てもないので居候させてほしい、と
美優は桃に頼み込んだという。
「働かなくてもいいって、言ったのにね」
いつまでも居ていいと言う桃と春彦に美優は感謝していたが、
甘えてばかりはいられないと、店員として働き始めたのだ。
しかし接客業未経験の美優には試練の連続だった。
「今の働きぶりは、どうですか?」
「叱ることも、少なくなってきた」
「ミスもかなり減ったしね♪」
桃が嬉しそうに言った。
しかし守には一つだけ、心配事があった。
「でも、僕心配です。みーちゃん、何でも我慢しちゃうから」
「そうなのよね。そこが私も心配で…」
「一人で、全部抱え込んじゃうからな」
春彦は眉間に皺を寄せた。
「自分で身を守ることも考えないと。
いつでも僕が守ってあげられるとは、限りませんから」
「いいわね、みーちゃんは。近くにこーんな素敵な王子様がいるんだもの」
「手を焼いてますよ。鈍感すぎるシンデレラには」
守は目を細めて笑った。
守が口にした言葉に、桃と春彦は目を瞬かせた。
「みーちゃんに再会できたのは、偶然ではなく必然ではないかと」
「奇跡って言いたいんでしょう?」
「そうなのかもしれません。神様が引き合わせてくれたんじゃないかって」
「きっと、そうに決まってるよ」
春彦は穏やかな顔で、何度も何度も深く頷いていた。
「僕は幸い、環境にも恵まれ仕事も順調でした。でも心の平安は、訪れなかった」
守は、美優が忘れられない女性だと口にした。
「忘れられないって、どういうこと?」
桃が首を傾げた。
「みーちゃんは、僕の…初恋相手です」
「まあ、素敵!」
桃の目が宝石のようにきらきらと眩しい。
「ふらふらと街を歩いていたら、この店に辿り着いて。
気付けば僕は、ドアを開けていました」
「巡り合わせよ!みーちゃんと平田さんは、互いに引き寄せられる体質なのよ!」
「引き寄せられるのって…体質なんですか?」
守は怪訝そうに桃を見た。
「桃、意味不明なんだけど?平田さんが警戒してるじゃないか」
「つ、つまり!運命に引き寄せられた、ふ、た、り、ってこと!」
桃は得意げにウインクしたが、隣の春彦は呆れ顔だった。
「平田さん、気にしないでくれ。
桃は突然意味不明なことを言うが、聞き流せば済むことだ。
俺もそうしてる。日常茶飯事だからな」
すると桃は、ハリセンボンのように頬を膨らませてじっとしている。
「あの…本当にいいんですか?桃さん、拗ねてますよ?」
「ああ、いつものことだ。気にするな」
「いつものことなんだ…」
不思議な夫婦だな、と守は思った。
ハリセンボンのように頬を膨らませている桃の頭を、春彦は優しく撫でている。
「拗ねるなよ。な、桃?」
春彦は、よしよしと桃の頭を撫でた。桃はまだ拗ねている。
「初恋相手ってことは…一目惚れか?」
「それもあります。けど…」
「けど?」
「みーちゃんは、幼馴染なんです」
守は児童養護施設『キユウ』で育ったこと、そこで幼い美優に出逢ったこと、
心も体も弱い美優をずっと守ってきたことを話した。
「そうだったのか…」
「みーちゃんは、いじめられることが多くて。
だから、僕が守ってあげなきゃって思ったんです」
大人しい美優は我慢することしかできず、声を上げることもままならなかった。
美優はいつも孤独で、一人遊びをする子だった。誰とも関わろうとしなかったのだ。
「最初は僕とも、話そうとはしませんでした。でも僕は根気よく話しかけた。
危険にさらされそうになった時は、真っ先に駆けつけて守ったんです」
いつもヒーローの如く守ってくれる守に、美優はいつしか気を許すようになっていた。
美優の世話をするうちに、守は美優に次第に惹かれていく。
「でも、なかなか気持ちを伝えることはできなくて。
そうこうしているうちに、みーちゃんは僕の前から姿を消したんです。別れも告げずに」
「えっ?どういうことなの?」
桃が身を乗り出して言った。春彦は桃の様子を見て微笑んだ。
「その前に、みーちゃんがここに来た時の話、聞かせて下さい」
美優がどうしてこの喫茶店に辿り着いたのか、守は知りたかった。
「それが、不思議なのよねえ」
「不思議?」
守が言葉の真意を探るように、桃を見つめた。
「みーちゃんは、いつも突然すぎるのよ。ある日突然、現れたんだから」
美優は親戚である桃が春彦と喫茶店を開いていることをどこかで知ったらしく、
生まれ故郷からこの東京へ、桃を頼って上京してきたという。
どこにも居場所がなく行く宛てもないので居候させてほしい、と
美優は桃に頼み込んだという。
「働かなくてもいいって、言ったのにね」
いつまでも居ていいと言う桃と春彦に美優は感謝していたが、
甘えてばかりはいられないと、店員として働き始めたのだ。
しかし接客業未経験の美優には試練の連続だった。
「今の働きぶりは、どうですか?」
「叱ることも、少なくなってきた」
「ミスもかなり減ったしね♪」
桃が嬉しそうに言った。
しかし守には一つだけ、心配事があった。
「でも、僕心配です。みーちゃん、何でも我慢しちゃうから」
「そうなのよね。そこが私も心配で…」
「一人で、全部抱え込んじゃうからな」
春彦は眉間に皺を寄せた。
「自分で身を守ることも考えないと。
いつでも僕が守ってあげられるとは、限りませんから」
「いいわね、みーちゃんは。近くにこーんな素敵な王子様がいるんだもの」
「手を焼いてますよ。鈍感すぎるシンデレラには」
守は目を細めて笑った。

