運命だけを信じてる


「どうです?僕は先輩の理想の後輩になれてますか?こんな髪ですけど、仕事とはきちんと向き合ってきたつもりです」


「小牧さんは私の新人の頃よりも、ずっとずっと仕事ができて少し嫉妬してますよ」


本音だ。あの頃は自分のことで精一杯だった私と比べて、小牧さんには周りを見る余裕がある。


「それなら良かったです。早く先輩に追いついて、一人前になりたいです」


「私なんかを目標にしちゃダメだよ。逢瀬先輩か星崎課長にして」


「…逢瀬先輩も課長も、全員、追い越せば、前山さんは僕のことを見てくれますか?」


蕎麦をすすっていた私はむせた。


慌てて水を飲み、小牧さんと向き合う。



「なんて。困らせるつもりはないんです。ただあなたが好きなだけで」


平然と蕎麦をすする小牧さんに、なんと返したらいいか分からない。


それ以前に、小牧さんのような完璧な人が私を好きだと本気で思っているのか、まだ半信半疑のままでいる。
そう言ったらあなたは怒るかな?ううん。哀しそうに笑うのだろうね。