運命だけを信じてる


新築の匂いがするお洒落なオフィスの前で、取引先の取締役と挨拶を交わす。


「管理課の前山です。宜しくお願い致します」


「原田です。こちらこそ星崎課長にはいつもお世話になっておりまして、今日はお気遣い頂きましてありがとうございました」


オフィスは有名デザイナーを起用したというだけあって、限りあるスペースを有効活用している。壁に描かれたデザインも美しく、細部までこだわっていた。


少し白髪がかった原田さんに事務所を案内してもらった。


今朝うちの社から届くように手配していた生花も事務所内に飾られて、何度もお礼を言われた。


内勤ばかりだと見えない人の繋がりを実感する。やっぱり仕事はひとりではできないのだ。






「前山、この後の予定は?」


車に戻りながら星野課長に尋ねられ、深く考えずに「特にないです」と答えた。



「それならここから少し離れた場所の店でもいいか」


「はい!ご一緒させてください」


自然とボリュームが上がった声で返事をすると、星崎課長は笑って助手席のドアを開けてくれた。