決して星崎課長が調子の良い言葉だけを投げる人でないと分かっているから、嬉しかった。
しかるべし時はきちんと怒り、メリハリのある人だと思う。
「前山には感謝しているんだ。営業部門に居た時から、ずっと。こんな俺に付いてきてくれて、ありがとう」
「私の傍に、星崎課長が居てくれたから辞めずにここまでこれたと思っています。こちらこそありがとうございます」
これまでたくさん、たくさん助けてもらったから。今はその恩をただ返したい。
「本当は、」
ーー生涯、あなたに付いていきたいです。
「うん?」
こちらを向いた星崎課長に、言ってしまいたくなる。この想いを打ち明けたくなる。
「やっぱり、なんでもないです」
「おい、なんだよ。言えよ」
「また、今度にします」
その"今度"が、訪れる日はあるのだろうか。少なくとも今の私に、この温かい空気を壊してしまうような告白をする勇気はないんだ。


