「後、意見があればなんでも俺に言ってくれ」
星崎課長はラジオを切った。
「なにかないか?不満でも要望でもいい」
「はい…」
すぐには思い浮かばない。
人間関係もそれなりに良好で、星崎課長に相談する程の不満はない。
「本当に?おまえの意見であれば全て聞くし、必ず業務に取り入れたり、改善するからな」
そこまでしてくれるの?
「前山はうちの課に必要な人だから。できる限りおまえの働きやすいようにする」
「同じようなことをうちの課の人、みんなに言ってますよね?」
「まさか、前山にだけだよ」
温かい笑顔と共に、胸がキュンとなる言葉が返ってきた。
"前山にだけ"
私は星崎課長が何気なく発したであろうその言葉を、忘れることはないだろう。


