運命だけを信じてる


先日の会議について聞き手の反応に愚痴を漏らす星崎課長は、慣れた手つきでハンドルを切る。


思えば星崎課長が運転する助手席に座ったことは初めてだ。


好きな人の助手席。
それだけでテンションが上がる。

仕事と言えど、ご褒美以外の何物でもない。



「前山はどう?残業のことは悪いと思ってる。ただ人事部がな、なかなか人材をうちに寄越さないから」


「新人は大抵、営業部門に配属ですものね。でも私は小牧さんの助けもあって、全然大丈夫ですよ」


新人は花形部署に配属されることが多く、管理部系にはベテラン社員が異動してくることが多い。営業部門に人材が優先的に回されることはどこの会社も同じだろう。


それに私は、星崎課長の下でなら何時間残業を強いられても苦ではない。管理課のためになるのなら、努力を惜しむつもりもないから。


「まだまだやれます」


「頼もしいが、身体だけは壊すなよ」


「はい」


自分が、仕事人間になるなんて考えもしなかった。ましてや生きるためというより、上司のために働くなどとは…思ってなかったな。