運命だけを信じてる


日曜日。
社有車で私の家まで迎えに来てくれた。

実家暮らしのため母親が星崎課長を一目見ようと身を乗り出してきたが、慌てて止めて、勢いよく玄関の扉を閉めた。


「おはよう」


「おはようございます。迎えに来て頂いてありがとうございます」


「とんでもない。こちらこそ貴重な休日にありがとう」


助手席のドアを開けてくれた課長は、スーツ姿で普段と変わらない出で立ちだったけれど、いつもの黒縁でなく青い縁の眼鏡だった。

些細な変化が、今日は休日だと告げているようで嬉しくなる。


「営業所までは30分くらいだから。眠かったら寝てくれてもいいよ」


車内にはラジオが小さめのボリュームで流れていた。


「挨拶が終わったら、近くでランチでもして帰る?」


「え?」


シートベルトが手からするりと抜けた。


「どうした?」


「あ、いえ。ぜひランチしたいです」


シートベルトを締め直して、星崎課長を見る。


そこにいた彼はいつもと同じように優しく微笑んでくれたけれど、私にはいつも以上に甘いものに映ったんだ。