運命だけを信じてる


好きな人と2人きり。

大型スクリーンで資料を映すため、見やすいようにカーテンは閉められていて薄暗い会議室。

星崎課長が資料から顔を上げてこちらを見た。


「小牧はよくやってくれているな。前山の指導が良いせいだ」


「そんな!私はなにもしていなくて…残業のこともそうですけど、助けてもらってばかりでして。OJTとして恥ずかしいです」


「アイツは言ってた。前山さんの教え方はとても丁寧で、きめ細かい。自分のために多くの時間を割いてくれているからこそ遅くまで残業していて、だからその気持ちに応えたいって。まだ半人前だから残業代はいらないから、前山の業務を手伝う許可をくれって言われた」


「小牧さんが…」


「俺は入社前に小牧と一度顔を合わせているのだが、その時は仕事に対する熱意は感じなかった。おまえの姿勢を見て、小牧は変わったのかもしれない」


好きな人に褒められている。
星崎課長は部下にお世辞を吐くようなタイプではないから、全て本音だろう。

けれど私は何もしていない。
ただ小牧さんが優秀なだけなんだ。

私が褒められる機会を作ってくれた小牧さんに感謝をする。彼に何かを返せたらいい。


それは仕事面でも、プライベートであっても。