「そうやってあなたはいつもはぐらかすのですね。婚約のことも」
「僕はあなたには不釣り合いな男ですから。あなたにはもっと相応しい人がいます」
「それでも私はあなたを手に入れるわ。どんな手を使ってもね」
"婚約"。話はそこまで進んでしまっているのだ。
彼女は社長令嬢で、2人が結ばれるということは星崎課長にとってメリットしかない。
美人の奥さんをもらえるだけでも幸せなのに。
私は絶対に祝福できない。
唇を噛み締めて下を向くと、影ができた。
「取り込み中ですね」
「小牧さん…」
扉の隙間から漏れる声に、いつの間にか現れた小牧さんは怪訝そうに目を細めた。


