運命だけを信じてる


小牧さんのおかげで終電前までには余裕で駅に到着できた。


「小牧さん、今日も遅くまでごめんなさい」


「言ったでしょう?僕は前山さんと一緒にいられるだけで嬉しいので」


駅のホーム。
連日の残業で疲れているはずなのに清々しい笑顔で返してくれた。

その笑顔に私の心もスッと軽くなる。


「来週には落ち着くから、もう少しお願いします」


「そっか、それなら来週は食事に行きましょう」


「はい」


2人で電車に乗り込む。
満員の車内でさりげなく私のスペースを彼が作ってくれている。おかげで息苦しさを感じない。

初めて男性から大切にされていると感じた。

今まで幸せそうな彼女たちを見て何度も何度も羨ましいと思ってきた。
そして今、私の心は温かく、優しさに包まれている。


こういう日常の積み重ねが、幸せというのかな。


手を伸ばしても届かなかった幸せを噛み締めながら、そっと目を閉じる。

小牧さん、ありがとう。