運命だけを信じてる


すぐに席を立とうとする逢瀬先輩のジャケットを慌てて引っ張る。


「どうしてです?もったいぶらないで理由を教えてください」


あいつはやめておけ。
小説やドラマではそんな台詞が多く発せられ、そしてその理由は物語の終盤まで語られないこともある。かつ物語の結末を左右するような重要なことが多い。


だからかな。早く聞かないと、そう思った。



「…あの髪色で平然と会社に来るような男だろ?そんな奴、おまえには似合わない。外見が全てというわけじゃないけど、服装とか髪とか、そういうもんは自分の意思で変えられるんだ。変えられることを敢えて直さない奴はそれ相応の評価を受けても文句は言えねぇよ」


上手くワックスを使って整えられた髪と、シワのない涼しげな淡いブルーのワイシャツ。清潔感たっぷりの逢瀬先輩の発言には説得力がありすぎる。


「小牧さんにも理由があって、金髪なのです」


「その理由をおまえは聞いたのか」


その問いに頷いた。