つまり小牧さんにとって、夏帆さんは"家族"だ。
あの親密な空気も納得できる。
「母親?めっちゃ綺麗な人だな」
「学生時代はモデルをしていまして。今もエステとか美容とか色々と」
すぅっと、肩が軽くなる。
「まぁ、おまえらも。よく話し合えよ。後悔しないようにな」
そう言い残して逢瀬先輩は開いたエレベーターから真っ先に下りて行った。
「……」
「……」
2人きりのエレベーター。
小牧さんに話したいことは沢山ある。
「前山さん、僕は大丈夫ですから。あなたはただ真っ直ぐ、好きな人の背中を追い掛けてください。もし手を伸ばして届く距離にいるなら、逃しては駄目ですよ」
「はい…」
いつもの優しい瞳。
彼はいつだって優しさで私を包み込んでくれた。
でも、優しくそっと離れていく彼にとって、
私はそれまでの女なのだろう。
手を伸ばして強引に引き止める程には、求められてはいない。…そういうことなんだ。


