幸い他にもエレベーターに乗り込んでくる人がいた。
2人きりにならなくて良かったと"開"ボタンを押すと、
「2人とも、しけたツラだな」
「逢瀬先輩!?」
長い指が伸びてきて、"閉"ボタンを押した逢瀬先輩は笑った。
「昨日、おまえらと別れた後、近くで飲み直したんだよ。そしたら、小牧がひとり飲んでた。相当酔ってたな…なのに今は、涼しい顔か」
「そう見えます?気分は最悪です」
小牧さんも二日酔い?
顔を見上げると、確かにはっきりとした二重瞼が今日は一重になり充血していた。
顔を見合わせることができなくて、小牧さんの変化を見ていなかった。
「それで?エントランスで話してた女、誰?」
逢瀬先輩!それを私が居る場所で聞きます?
相変わらず容赦ないですね!
「富田夏帆さん。飛鳥の実の母で、俺の母親代わりですね」
身構えたものの、小牧さんの落ち着いた声に肩の力が抜けた。
母親代わり?


