運命だけを信じてる


堂々と彼らの前を通り過ぎるには、今は随分とコンディションが悪い。

寝不足で、顔も頭もぐしゃぐしゃだ。
公園でメイク直ししてくれば良かったな…。


「なんですか、それ…ははは。夏帆さん、相変わらずですね」


白い歯を見せて小牧さんは笑っていた。
彼は本当に夏帆さんの前だとよく笑う。



「それって褒めてるの?まぁ、いいわ。またゆっくりね」


「駅まで送りますよ」


「いいわよ。ほら、早く仕事に戻りなさい」


夏帆さんは小牧さんの頭を撫でると、ヒールの音を響かせて歩いて行く。

カッコイイ人だな。



結局2人の前を通り過ぎることができず、傍で立っていた私も彼女を見送る。

彼女は小牧さんのなに?


「前山さん、どうしたんですか」


「…あ、外から戻ってきて」


小牧さんと目が合い、気まずさのあまりすぐに顔を反らした。


「そうじゃなくて。顔色、悪いですよ」


「あー、昨夜、少し飲み過ぎちゃって」


ヘラヘラと笑って誤魔化す。


「誰と飲んだんです?」


「……星崎課長と、逢瀬先輩と3人です」


嘘は、ついてないよね。