運命だけを信じてる


寝不足で冴えない頭でどうにか遅刻せず会社に辿り着いた。目元のクマもメイクで隠せたと思う。


「おはようございます」


オフィスに入り管理課のみなさんと挨拶を交わしながら、自席に着く。

いつも通り逢瀬先輩はもう来ていて、栄養ドリンクを飲み干したところだった。


「おはようございます」


「おはよ」


あれ?
絶対なにか聞かれると思った。好奇心を抑えられない目で詮索されるかと思っていたが、逢瀬先輩はすぐに新聞に視線を下げた。


パソコンの電源を入れて、逢瀬先輩を伺うも結局視線は合わなかった。



「おはようございます」


「おはよう」


メールのチェックを終えた頃に星崎課長と小牧さんが到着した。

なんとなく顔を上げにくくて、パソコンに向いたまま2人の挨拶に答える。



「昨夜なのですが、」


小牧さんが座りながら声を掛けてきたので、内心ヒヤリとしながら顔を向ける。


「僕、前山先輩に連絡しましたか?着信履歴が残っていて…」


「え?気付きませんでした…」


飛鳥さん!
隠れて電話をするなら着信履歴を消しておいて欲しかったよ!



「そうですか。誤操作してしまったみたいです」


「私もよくあります…」


たぶん、誤魔化せたようです。