運命だけを信じてる


『彼と婚約する前に言われたの。好きな人が居るって。問い詰めたら名前も教えてくれたわ。まさかあなただなんて、趣味が悪いわね』


「すみません…」


『告白されたのにどうして保留にしてるの?すぐに彼に答えなかったの?それって私のため?私への罪悪感なら止めてよ、気持ち悪い』


「すみません…」


謝ることしかできない。



『彼が他の女を想っていることなら、ずっと知ってたし、それでも傍にいたの。ただ、どうしても謝って欲しいことがある。まぁ土下座されても許せないことだけど』


「はぁ…」


すぅっと、大きく息を吸い込む音が聞こえた。



『真矢をフッたこと、死んで詫びろ!!』


え?

耳鳴りがするほどの大きな声が響いた。


『マジで死ね!』


今時の言葉を投げ付けられ、一方的に通話終了の音が響いた。




ーー違う。
勘違いしそうになった。
彼女は、怒りまかせに電話してきたのではない。彼女自身のために罵倒を投げつけてきたわけでもない。


真矢ーー小牧さんのため、居ても立っても居られなくて、電話してきたんだ…。


小牧さんが私とのことを飛鳥さんに話していたなんて考えもしなかった。