躊躇いことなく通話ボタンを押す。
こんな時間になにかあったのだろうか。
「小牧さん、どうかされたのですか?」
『……真矢じゃないわ。東 飛鳥です』
「……」
彼女が私になんの話だろう。
『少しあなたと話したいの。でも顔を見たら殴りそうだから、兄の携帯を借りました。兄はもう寝たけどね』
「話って…」
良い話しでないことは確かだ。
『彼から聞いたわ。今夜、あなたに告白したってね。それで?あなたの答えは?私には知る権利があると思うの』
「……」
電話越しに伝わる威圧感。
怯むな、星崎課長は私を好きと言ってくれたんだ。
「私も入社以来、ずっと星崎課長に思いをよせていました」
声が震えたけれど、伝えられた。
でも私の返事は、飛鳥さんを傷付ける刃だ。
『…両想いだったのね…良かった』
え?
しかし飛鳥さんの反応は違った。
ほっとしたような溜息を漏らしたのだ。


