答えに迷っていると、小牧さんは笑ってくれた。

寂しそうに、困ったように。


「前山さんに隠し事をしたことについては申し訳ないと心から思っています。だけど、あなたの隣りに居ることができた日々は楽しかったし、僕の宝です」


「小牧さん…」


「飛鳥には説得して、婚約を破棄させました。うちは血の繋がらない4人兄妹でたくさん悩んできました。愛のない結婚は負の連鎖しか生まないことを飛鳥は身をもって知っているから。せめて飛鳥には、飛鳥のことが本気で好きな男と結婚して欲しいと思いました。そんな過保護な兄の気持ちを、飛鳥も星崎課長も理解してくれたはずです」


兄としての優しさ。
小牧さんらしいとは思う。
でも、

「それだけですか?」


「どういう意味です?」


「私の片思いの相手が星崎課長だと、話してしまったから…」


「それは違います。あなたのことは関係ないです。これはあくまでも僕と妹の話ですから」




付き合うと決めた日。

ーー僕は僕の"恋"より、君の"恋"を応援する。


そうあなたは言ってくれた。
その言葉に嘘は無かった。


だからーー
ううん。いくら問い詰めたところで、小牧さんは認めないだろう。


私のために2人の婚約破棄を仕向けたなんて、信じたくない。でもきっと、彼をそうさせる動機の一部にはなってしまったのではないか。



「でも結果的に星崎課長はフリーですよ」


「え?」


「気持ちを伝えてみたらどうですか」


微笑みながら、まるで他人事のような提案に少し腹が立った。


私は、あなたと付き合っているはずなのに…。