運命だけを信じてる


未来プロジェクトで仕事が止まった分、私たちは残業になった。

私たち、つまり小牧さんと2人きりのオフィス。


仕事の話は当たり障りなくできたが、肝心なことはなにも話せていない。


でも聞かないと。
このもやもやは私から離れてくれないだろう。

手を止めて小牧さんの横顔を見つめる。


彼を責めたいわけじゃないから、言葉を選ばないと傷つけてしまう。


「いいですよ、なんでも聞いてください。文句も受け付けます」


視線に気付いたようでパソコンから目を離すことなく小牧さんは言った。



「…もう少し早く話して欲しかったです。私に話そうと少しでも思ってくれていましたか?」


「いいえ」


間髪空けずに小牧さんは返事をくれた。


「本当のことを知ったら、あなたは僕と付き合ってくれなかったでしょう?だから出来る限り長く、隠し通せたらいいと思っていました」


「それでも教えて欲しかった」


「…教えたら、付き合ってくれました?」


「それは…」


身分の差。
こんな大それたことで悩む日がくるなんて予想してなかった。