ふぅ、隣りから溜息のようなものが聞こえ、逢瀬先輩は小牧さんの席に座った。
そして気遣わしげに私を見た。
「小牧くんは、東社長の息子だよ」
これまでにないくらい真剣な表情で逢瀬先輩が告げるものだから、すぐに返事ができなかった。
「ええ!嘘!?」
気怠げに話してくれた逢瀬先輩の言葉に、いち早く反応した杉山さんが私の代わりに奇声を上げた。
「ということは、小牧くんは東課長と兄弟で、飛鳥ちゃんとも血が繋がってるの?」
「はい。母親は違うらしいですけど」
息子?
誰が誰と兄弟だって?
「みんなが気を使うと申し訳ないから、敢えて話す必要はないという小牧くんの判断みたいっす。まぁ俺も星崎課長から聞いたんですけど」
ついていかない。
頭が得た情報を全然、整理してくれない。
聞いてないよ。
私、一応、小牧さんと付き合っているんだよね?
肝心なことはなにも話してくれなかった。
どうして隠していたのだろう。話してくれれば良かったし、話をする機会はいくらでもあったはずなのに。
小牧さんは、東社長の息子で、
東課長とは兄弟で、妹は飛鳥さん。
ーーナニソレ…。


