ーー飛鳥さんは、星崎課長を殴った。
いや、殴ると思った。
しかし実際に、
彼女の拳を頰に受けた人物はーー
小牧さんだった。
「真矢!あなただけは私の味方で居てくれると思った。東家の血を引く人間で、唯一!真矢だけは、違うと思ったのに!!」
言い終わると同時に、飛鳥さんはその場に崩れ落ちた。
小牧さんは屈み、飛鳥さんと目線を合わせる。
その右頬は赤い。
「飛鳥の味方だからこそ、愛のない婚姻には反対だよ」
諭すように小牧さんは言う。
「星崎課長を解放してあげて」
食い入るように誰もが見つめる。
私もただ傍観者として、成り行きを見守っていた。
まるで恋愛映画でも見ているような、そんな気分だった。


