運命だけを信じてる


開いた扉からコツコツと靴音を響かせて入ってきた女性に、管理課全員の視線が集まる。


打ち合わせをしていた星崎課長たちも話を止めていた。


「どういうこと!」


甲高い声を響かせ、高いヒールにも関わらず大股で足早でオフィスに入ってきた彼女ーー東 飛鳥さんの顔は真っ赤だった。


「婚約破棄ってどういうこと!」


聞きたくなくても聞こえてしまった悲鳴に近い彼女の言葉に、今度は星崎課長に視線を向ける。


星崎課長は突然のことに目を見開いている。



"婚約破棄"
ただ事ではない事態らしく、飛鳥さんはひどく取り乱している様子だ。


「さっき、お父さんから呼び出されて聞いたわ!どういうこと!黙ってないでよ!」


飛鳥さんは今にも飛びかかりそうな勢いで星崎課長の元へ駆け寄った。


「どんな言葉でお父さんを説得したの?私がどれほど、彼を愛しているか知っているくせに!目的はなに?」


乱れた息で言葉を連ねる飛鳥さんは、右腕を上げて、拳を握り、


ーー彼を、殴った。