「ドライヤーで髪、乾かして寝てくださいね」
小牧さんはいつもの微笑みを称えて、優しい目で私を見下ろす。
そしてそっと頭を撫でてくれた。
「おやすみなさい」
「……おやすみなさい」
小牧さんを、止めることができなかった。
心に星崎課長への想いを残したまま、小牧さんを求めていいのか迷ってしまったから。
ーー待って。もう少しゆっくりしていって。
心の中ではそう呼び止めたけれど、振り向いてくれなくて静かに扉が閉まる音がした。
翌日、小牧さんはいつも通りで。
私たちの関係はなにも、変わっていないかのように思えた。
帰りの新幹線では一緒に景色を写真に収めて、駅弁を食べてーー特に変わったことはなにもなかった。
それら全てが小牧さんの優しさだとも知らず、のんきに彼の隣りで寛いでいたのだ。


