お礼を言って小牧さんを部屋に招き入れる。
「本当に大丈夫なので…ご心配をお掛けしてごめんなさい」
「早く熱を計ってください。平熱だったらすぐに帰りますから」
「いや、でも…今、お風呂入ったばかりなので」
「知ってますよ。髪濡れてるし、頰だって紅い。それに、いつも以上にいい香りがします」
「だ、だから今、計っても…意味が無いと思います」
「まぁそうですよね。それじゃぁ早く髪を乾かしましょう。座ってください、僕が乾かしてあげます」
鏡台の上に置かれたドライヤーを手にとった小牧さんが近付いてきたので、慌てて距離を開ける。
「自分で出来るので大丈夫です」
「いいから、座ってください」
「そんな恥ずかしいこと、できません」
ドライヤーで髪を乾かしてもらうことは憧れのシチュエーションではあるが、今までしてもらったことがないし!とにかく今はダメだ。
「乾かすまで僕は帰りませんよ。早くしてください。風邪引く前に」
「……無理です」
「どうしてですか?」
「どうしてって……」
だから恥ずかしいからって、言いましたよね?それに私の髪質は小牧さんのようにサラサラではなくて、指通りの悪い癖っ毛だし…。


