運命だけを信じてる


大阪支社は駅と直結した高層ビルにある。
東京本社のような広さはないけれど、オフィスからの展望は絶景で開放的な気分になれる。

夏帆さんは先にホテルに行くと言って駅で別れた。


会場に入ると全国から集まった社員が事前に割り振られたテーブルに着いていた。私と小牧さんは同じテーブルで、7、8人でグループを形成されていた。

既に着席していたメンバーと簡単に挨拶を交わす。管理課は他部署と関わる業務が多いため、顔見知りも何人かいる。


そして始まった未来プロジェクト。


夏帆さんの講義は分かりやすく、現代社会の動向を踏まえた上で会社になにを求めるかなど、様々な切り口から丁寧に説明してくれた。


隣りに座る小牧さんが真っ直ぐな視線を彼女に向け、時折メモを走らせている。


午前中は夏帆さんの講義が中心で、午後は逢瀬先輩の言う通り自由討論の場となった。


自分がどうしたいか、相手の主張に対してどう思うか。自由に話し合う。

今日中にチームで纏め上げて、明日の午前中は発表しなければならない。そして午後には新幹線で帰る予定だ。


私のチームはみんな率先して意見を出してくれて、定時のチャイムが鳴る頃にはきちんと形になっていた。


「あら、このチームは優秀ね。テーマも的を射ているし、既存概念に囚われない発想力もいいわ」


各テーブルを巡回する夏帆さんが声を掛けてくれた。


「でもこの部分が、説得力に欠ける気がして」


「どこ?」


トントンと、小牧さんが模造紙に書いた文字を叩く。

やっぱり夏帆さんにはタメ口なんだね。