運命だけを信じてる


小牧さんはすぐに戻って来てくれた。


「知り合いですか?」


さりげない物言いになるよう努める。決して気にしているわけじゃない。


「昔からお世話になっている親戚で、忙しい両親に変わって僕の世話を焼いてくれた方です。まさか同じ新幹線で、プロジェクト講師だとは驚きました」


親戚のお姉さん。
家族みたいなものなのかな。


「本当に偶然ですね」


「昔から彼女の話は面白いので、前山さんも期待しててください」


"前山さん"
夏帆と呼ばれた彼女の後に聞く自分の苗字は随分と冷たいものに聞こえた。

小牧さんはいつも通りなのに、おかしいな…。


「ずっと勉強を見てもらってて、彼女のおかげで…」


「小牧さん、売店でお菓子買ったので食べますか?」


自分から雲田さんのことを聞いたのに、話題を変えてしまった。


「あ、新発売のチョコミントですね。気になっていたんです」


「美味しいですよ。私も昨日初めて食べてリピートしました」


「いただきます」


甘ったるいはずのチョコレートですら苦く感じてしまっている。