「真矢が迷惑かけてないかしら?」
「とんでもないです」
「良かったわ。なにかあったら私に報告してちょうだい」
「はぁ…」
迷惑かけてないかしら?
報告してちょうだい?
まるで自分の方が小牧さんと親しい関係にあるような物言いだ。
小牧さんと私は同じ職場に働いているだけの関係ではなくて…つ、付き合ってるんだし。
そんなこと報告する筋合いもない。
「私、3つ後ろの席なの」
「偶然だね。キャリーバッグ、棚に上げるよ」
「助かるわ」
小牧さんは私の方を見て頷くと、夏帆さんの席に行ってしまった。
小さなキャリーバッグならば女性だって簡単に持ち上げられるよ!
振り返って彼らを見ることもおかしいので、窓の外に視線を映す。
先程まで綺麗に感じていた風景が、街並みが、急に霞んで見えた。


