運命だけを信じてる


ゆっくり目を開けた小牧さんは気怠げに顔を上げた後、彼女を視界に入れたようで慌てて身体を起こした。


「ナツホさん?なんで?」


彼女がサングラスを取ると、目鼻立ちがはっきりとした綺麗な顔が露わになる。サングラスで覆われてしまうといっても過言でないくらい、小顔だ。


「あれ?聞いてない?未来プロジェクトの講師をやるの」


「そうなの?知らなかった」


小牧さんは新入社員ということもあり誰にでも敬語だ。たまに私に対してはタメ口になることもあるけれど、プライベートでもほとんど敬語だった。


そんな彼の口調は珍しく砕けていて、親しげだ。


「こちら僕の教育係の前山さんです」


「雲田 夏帆(くもだ なつほ)です。宜しくお願いします」


名刺交換をする。
夏らしい柑橘系をイメージするネイルを施された綺麗な指だった。



「前山 有希です。宜しくお願いします」



会社関係の人だから教育係と紹介されることは当然だけれど、元々小牧さんの知り合いであれば恋人と紹介しても良かったよね。
綺麗な女性を前にそんなことを考えてしまった。