運命だけを信じてる


先に行ってますね、そう言って小牧さんは休憩室を後にした。


「お礼…言わないと」


ゴールデンウィークに出掛けてもらったことと、私の話を聞いてくれたこと、そして指輪。ありがとうじゃ足りないくらいだよね。


珈琲を一気に飲み、小牧さんの後を追う。


エレベーターホールに向かうと、小牧さんの後姿が見えた。





「こま、」


名前を呼ぼうとして息を呑む。


小牧さんは見慣れた人物と対峙していた。

私の最も嫌いな元上司、東課長…。


強い目力で小牧さんを睨む東野課長は相変わらずの冷たい声を発した。



「まだそんな髪をしてるのか」


「僕は結構、気に入っているのです」


「そんな髪をしているから、任された仕事も期限通りにこなせないのだ」


きっと私のミスのことだ。
出て行きたいけれど、出て行ったところで東課長の非難はより一層酷くなるだけだ。

堪えることもまた、勇気。
私は星崎課長からそう教わった。