運命だけを信じてる


「ありがとうございます」


苦味の混じった香りに反応して目を開けた小牧さんは小さく笑った。


「前山さん、落ち込んでますね」


「なんで笑うの?」


「可愛いからですよ」


「は?」


「本気で恋をしているあなたが可愛いからです」


サイドテーブルに珈琲を置いて、再び目を閉じてこめかみを手でマッサージしている小牧さんを睨む。もちろん彼には届いていないけれど。


「私の反応を見て楽しまないでください」


「楽しんでないよ、と言えば嘘になります。だって星崎課長が結婚すれば、あなたは僕のものになるかもしれない。でもあなたの哀しむ顔を見ることは本望じゃないですし、僕も辛いです。…僕の感情はぐちゃぐちゃですね」


同じだね。
私の感情もぐちゃぐちゃだよ。
星崎課長の幸せを願う一方で、結婚のことを聞いてショックを隠せないでいる。


「星崎課長に結婚して欲しくないですか?」


目を閉じたままの小牧さんの言葉に、素直な答えを告げる。


「……欲しくない、です」


真っ直ぐな想いを私に伝えてくれたあなたには嘘をつきたくないと思った。