運命だけを信じてる


婚約か…星崎課長が否定しないということは、そういうことなのだろう。


「さ、会議に戻る時間だ」


「課長!会議終わったらたっぷり話を聞かせてくださいね!」


逃げるように足早にオフィスを出て行く星崎課長の後姿。杉山さんは楽しそうに笑っていて、水原さんや平井さんも興味津々な様子で話を聞こうと彼女に近付く。


杉山さんは声が大きいから、自席にいても聞こえてしまうだろう。聞きたくないような聞きたいような…いずれ分かることだし、心構えだけでも先にしておいた方が良いよね。


「さっき東 飛鳥さんと同じエレベーターになってね。彼女が嬉しそうに話してくれたの。管理課は全員、結婚式に呼んでくれるって。まぁ社長令嬢ですし、当然盛大な式になるのでしょうけど」


結婚式か…できれば行きたくない。
好きな人が結婚する様を目に焼き付けて、どうするというのだ。一生、癒えない傷を作りにいくことと同じだ。


朝から村井さんに怒られて、最も聞きたくない話題を耳にして。今日は厄日だ。


まだ続きそうな話を聞いてられず、そっと席を立った。たまには休憩スペースで珈琲でも飲もう。