運命だけを信じてる


家に帰り、指輪をはめてみる。


何度見ても素敵で、小牧さんのセンスの良さが伺える。とても気に入った。

けれど私は、この指輪を会社には付けていけない。落とす懸念もあるし、周囲の詮索も怖い。今まで指輪を身に付けていなかった私が急にはめてきたら、どうしたのかと聞いてくるだろう。

鋭い逢瀬先輩には贈り主のことも含めていち早く気付かれるに違いない。

想像力を働かせるだけで一気に疲れた。
元通り箱に指輪を納めて、溜息をついた。





お風呂上がり、牛乳を飲みながら母に近付く。


「お母さん、料理教えてくれる?」


「今更どうしたのよ?」


食器を拭きながら、母は信じられないという目で私を見てきた。

まぁ当然の反応だよね。
今まで料理を手伝ったことなど一度もなかったから…本当に私は甘やかされて育ったことを痛感する。だから、変わりたい。


「この歳で料理ができないのはマズイでしょ?教えて」


いつになるか分からないけれど、上達したら小牧さんに何か作ってあげたい。

指輪のお礼はその日まで待っていてくれるだろうか。