運命だけを信じてる


一緒に残業すると申し出そうな小牧さんを定時に帰るよう言い聞かせて、水原さんの隣りで指示を受けながらパソコンと向き合う。


「ごめんね、巻き込んでしまって」


「大丈夫ですよ。これは今日中には終わりませんよね。私、明日からも特に予定がないので、手伝いますよ」


情報部によると復旧は当面、無理そうとのことだ。明日からシステム会社もお休みで、対応してもらえないらしい。現代社会はコンピューター言語なるものに頼りきって、システムエラーにすら対応できないなんておかしな文明の進化だとは思う。

けれど今、私が考えることはそんなことではなくて目の前の仕事をどう片付けるかだ。



「そう言ってもらえると本当に助かるよ。本当に本当に大丈夫?」


忙しいところ手を止めて私と目を合わせてくれた水原さんに大きく頷く。


「私、営業部に居た時は毎日ビクビクしてました。数字だ、競争だという営業マンのピリピリした雰囲気もそうですし、それに比例する形で女性アシスタントの方も怖くて。新人の頃はおまえなんて使えないと日々罵倒されていました」


何度も辞めてやろうと思った。
それでも最後の一歩を踏み止まった理由は、星崎課長の存在だった。私とは違うチームだったけれど、影で助けてくれて励ましてももらった。


「それから色々あって、管理課に来て、営業部とは空気が違うことに驚きました。水原さんは、一番最初に私を夜、飲みに連れて行ってくれた先輩なのです。入社以来、初めてですよ?」


「え?そうなの?」