運命だけを信じてる


確かに人手は多い方がいいかもしれないけれど。水原さんは逢瀬先輩や小牧さんがいる中で、私にヘルプを求めてくれたんだ。私がやりきらないと。


「いえ大丈夫です。小牧さんは自分の仕事を優先してください」


「でも、今日中には終わらないでしょう」


「小牧さんにまで手伝ってもらってしまったら余計に水原さんが責任を感じてしまうと思うから。だから今回は私だけで大丈夫です」


水原さんは外出中の星崎課長に電話をかけているようだ。

みんなに迷惑をかければかけるほど、水原さんは自身を責めるだろう。手伝ってもらうことによりみんなのゴールデンウイークが潰れたりしたら、責任感の強い水原さんは絶対に自分を責めてしまう。


小牧さんは明日から大学の友人とバーベキューに行くと言っていたし、逢瀬先輩も彼女と旅行すると自慢げに話していた。納得できない表情の小牧さんには申し訳ないけれど、そんなみんなの予定をリスケさせるわけにはいかないよね。


「本当にいけるんだろうな?」


斜め前方の席から、厳しい声が飛んだ。



「できます。やります」


逢瀬先輩の言葉に答える。

2人では無理だと言えば、間違いなく逢瀬先輩は手を貸してくれる。けれど今回は私たちで対処できる範囲の問題だから、2人でやり遂げる。

水原さんだってそう判断して、私だけに声を掛けたのだろうから。


「分かった。手伝えることがあれば言えよ」


「はい」


よし。気合いを入れて頑張ろう。