運命だけを信じてる


テーブルに並ぶ料理。

ふんわりとした卵焼き、塩胡椒のさっぱりとしたお肉料理に、魚介のホイル焼き。そして具っぷりの豚汁。

私の料理はチェーン店の居酒屋にすら敵わない。努力をしてこなかった自分自身のせいだ。


仕事が忙しいことを理由に自立することを止めて、両親に頼ってきた。こんな私が誰かから本気で愛されるはずがないと、気付いた。


気付いた日から、恋を止めた。
どうせ料理が上手くなっても私は誰からも愛されない。そうふてくされたのに、それでも星崎課長を想わずにはいられなかった。


けれどもちろん告白する勇気もなく、ただ会社に行って彼の顔を見ることに幸せを感じていた。


そんな時に現れてしまった、小牧さんはーー私の都合の良い夢のような存在だ。


こんな私を、好きって言ってくれる。



「小牧さん、どうして私のことを好きなんですか」


顔を上げて問う。
容姿も良くて仕事もできて、優しくて。完璧な人が、どうして私のことなんかをーー


「運命と言ったでしょう?僕は前山さんを好きになる運命だったのです。僕はあなたの全部が好きですよ」


目尻を下げて、珍しく照れたように笑ってくれた。

小牧さんの顔が少し赤い。お酒だけのせいでないと自惚れてもいいですか?