運命だけを信じてる


俯いた私に、小牧さんはお肉を取り分けてくれた。


「温かいうちに」


「ありがとうございます」


「前山さんの恋が、もし叶わなかったら。その時には僕が居ることを思い出してください。あなたと結婚したい男が居ること、それだけ分かってくれていれば僕は満足です」


「小牧さん…」


「あなたに付き合って欲しいと言ったわけは、バレンタインデーやクリスマスにもしあなたがひとりで過ごすようなことがあれば、隣りに居たいと思ったからです。休日も、もし空いていたら僕を誘えるような関係でありたいからです。休日に彼氏を誘うなんて普通のことでしょう?」


全部、私が優先だ。
私が空いていたら、小牧さんを誘えばいい。
私の恋が上手くいかなかったら、小牧さんをーーそれって小牧さんを利用していることと同じだよ。自分の心の隙間を埋めるためだけに。


「どうしてそこまで、私のこと…」


「好きだからです」


真っ直ぐな瞳が、優しく私を包む。


「前山さんが好きだからですよ」


甘い空間。
ここに囚われていたくなる。

それでもその隙間から、そっと星崎課長が手を差し伸べてくれるのであればきっと私は迷ってしまうのだろう。