運命だけを信じてる


料理が不得意な女なんてお嫁さん候補から外されてもおかしくないと思う。


「良かった」


「なにがです?」


「前山さんの手料理を他の誰かに食べられてなくて」


「私の話、聞いてました?まともな料理を作れないんです」


「僕も料理はできないので。2人で練習しましょう」


小牧さんの反応は想像していたものと違い、呆れられた様子もなかった。

女は料理洗濯掃除、育児。そう思っている男性が少なくない世の中で、小牧さんは"2人で"と言ってくれた。


「今度、うちにきて練習しませんか?」


「私、りんごの皮むきすらまともにできないです」


「それなら怪我しないように、気を付けながらやらないと」


優しい。普通は引くところなのに。
彼は微笑んで、私の苦手なことを当たり前のように受け入れてくれた。