運命だけを信じてる


「小牧さんは好き嫌いあります?」


「無いです。なんでも食べます」


「好きなものは?」


そういえばあの初デート?以来、お昼ご飯を一緒に食べることはあっても、こうしてゆっくり話しながら食事をすることは初めてだ。


「手料理」


「もっと具体的に…」


「分かってください。前山さんの手料理が食べたいってこと」


「…ごめんなさい。私は長いこと実家暮らしで、料理なんて全然しないの。手先も不器用だし、いい歳して恥ずかしいのだけど、料理はちょっと…」


仕事から帰ると用意されている母の作り置きを食べて、お風呂に入って。後はベッドにダイブするだけだ。

休日もよく眠って自分の好きなことに費やすだけで、炊事洗濯掃除は母任せにしてきた。

社会人としてどうかしてるよね。
これだから実家暮らしは甘えてると馬鹿にされるんだ。


「今までの彼氏に手料理を振る舞ったことは?」


「…あると思います?」


私の料理が少し高級なレストランに敵う日は恐らく来ないと思われます。