運命だけを信じてる


入社初日に2人で初めて飲んだ居酒屋に向かった。少しだけお洒落な居酒屋。辞めたいという相談だと思っていたから、あの時は緊張してたな。


「ここに座った前山さんの強張った顔と言ったら…くくく」


まさかの同じ席に通されて小牧さんは笑いを堪え切れない様子だった。


「私は緊張してたのに、小牧さんは変なことを言い出すし、ホントに頭が混乱してました」


「そうですよね。普通に焦りますよね」


口元に笑みを浮かべたまま、小牧さんは店員を呼んだ。


スーツ姿に金髪。
その辺のお堅いサラリーマンには真似できない容姿だけれど、今の私は彼のそんな容姿を自然と受け入れられている。


「今日は少しゆっくりしても良いですか?前回は逃げられちゃいましたし」


ビールと適当なつまみを注文した小牧さんは高そうな腕時計を見ながら聞いてきた。


「先に帰ったのは小牧さんでしょう?」


「前山さんが早く帰りたそうだったので」


「否定はできませんけど…」


「じゃぁ今日はゆっくりしていきましょう」


メニューを渡されて、遠慮なく食べたいものを注文した。

良かった。
今日は仕事終わりのビールがとても美味しい。