運命だけを信じてる


ここで小牧さんのことをよく言えば星崎課長が劣っているように解釈されそうで、口を閉ざす。

高いヒールをコツコツと響かせて廊下を歩く彼女の後ろをとぼとぼ付いていく。仕方ないよ、方向が同じなのだから。


星崎課長の恋人のことを悪く言いたくはないけれど、どうしてあの人なのだろう。

美貌?お金?地位?
違う。星崎課長はそんなものに釣られて彼女を選ぶような人でないことは私が1番よく知っているじゃないか…。




「浮かない顔だね。どうしたの」


エントランスを出て、いつの間にか東さんの姿が見えなくなった時、そっと肩を叩かれた。


「小牧さん!?」


「お疲れ様です」


「か、帰ったのでは…」


「待ち伏せしてました」


これで3回目だ。


「ご飯行きませんか」


そう誘われて首を縦に振る。
まだ小牧さんのことをよく知らなかった2回目までとは違い、素直に頷けた。