運命だけを信じてる


4月下旬に入ると管理課の仕事も落ち着いて、定時で帰る人も出てきた。


「小牧さん、今日はもう帰ってください」


「前山さんは?」


定時のチャイムと同時に小牧さんに声を掛けると、彼はタイピングする手を止めた。


「私もキリのいいところで帰ります。帰れる時は帰らないと!」


「分かりました」


再び手を動かし始めた小牧さんは、それから数十分後に帰って行った。


私も今日は早く帰ろう。
未来プロジェクトは泊りがけだし、必要なものを買って行こうかな。会社帰りにショッピングは久々だ。


浮かれる気持ちでエレベーターに乗り込むと、既に乗っていた人物に目を奪われた。



「お疲れ様です」


「ええ、お疲れ様」



私よりも年下なはずの東 飛鳥さんは面倒臭そうに返事くれた。ちらりとだけ私を見てから視線は自身の爪に戻っていく。

キラキラと光る春らしいネイルは確かに綺麗だ。ピンクの頬紅がのった白い肌も綺麗だ。

だけど、この人の心はきっと汚い。

そう思うことで気持ちを落ち着かせた。