運命だけを信じてる


此処は会社の近く!
誰か見ているかも分からない場所で!


我に返って小牧さんを無言で睨む。


「……最低です」


「嫌だった?」


「嫌です」


「僕が嫌いだから?」


「……」



その問いに顔を上げると、小牧さんは真顔で私を見ていた。



「嫌いな男からのキスなんて気持ち悪いよね」


そう言って否定する間も無くワイシャツの袖で、ゴシゴシと強めに私の唇を拭ってくれた。


嫌いではない。だけど好きだとも断言できずにいる。


「僕の周りは自ら服を脱ぎ捨てて喜んで迫ってくるような女ばかりだった。それを相手することが日常で、なにも思わなかったしなにも感じなかった。でも今は心底、気持ち悪いと思う」


想像してしまった。
彼に群がる女性たち。そしてそれを真顔で受け入れるーー彼。


「もうあなた以外には触れたくないし、触れさせない。あなたがいいんだ」


大切な何かを切望するその言葉が、的を射る矢のように真っ直ぐに私の心に届いた。