「ごめん、私は愛されることに慣れていないみたいです。まだこの状況に付いていけないと言いますか…」
「じゃぁ早く慣れてください」
すっと手を伸ばして、彼の手が私の右頬をかすめた。
ほんの一瞬だけ温もりを感じた。
「そしてたくさんあなたに触れさせて?」
「な…」
「さ、行きましょう」
絶句している私を置いて会計に向かった小牧さんに、結局2人分を支払わせてしまった。
「返します!」
「いらないです」
「会社では一応、後輩でしょう。後輩に奢らせるなんて…」
「それじゃ、身体で払ってください」
すっと身をかがめた彼の唇が、私のそれに重なった。
「んっ、」
今度もかすめるようなものだったけれど、場所が場所だけに、驚いて、後退した。


