「前材さん、結婚しよう!」
明は勢いよく前材さんの胸に飛び込んだ。
「うん、そうだね。あっくん。」
明の冗談を前材も微笑みながら冗談で返した。
少し甘えた口調で明は話を続けた。
「ねえ、冗談はここまでにしていい加減下の名前教えてよ。それと本当の年も。」
「それだけはちょっと・・・」
前材は口をにごした。
構わず明が話を続ける。
「前材さんは僕のこと、あっくんって呼ぶのに僕だけ前材さんって変でしょ。」
いくら聞いても前材は頑なに教えようとしなかった。
「そんなことより、あっくんは悩みがあって私に会いにきたんじゃないの。あっくんがくだらない冗談をいう時は大体そういう時だからね」
前材は軽く微笑み優しく明に話しかけた。
永い付き合いもあり明の心を見透しているようだった。