しかし明は焦っていた。明の全財産は今の時点で五万三千円。
なんだ返せるではないかと皆そう思うだろう。
ところがこの男かなりの自分勝手で、他人の事など二の次だ。
明はいつになく真剣に悩んだ。
伊須来には早く五万円を返したい。だが返したら新作のゲームソフトが買えなくなってしまう。
しかしどんなに考えても答えがでることは無かった。
追いつめられてふと脳裏にある人物の笑い顔が浮かんだ。
「一人で悩んでいてもなにも解決しない。相談するしかない。前材(ぜんざい)さんに相談しよう」
明は顔をパチパチと叩き、自分に言い聞かせるようにわざと声を放った。