不明

明は顔をこわばせながらそっと話し始めた。
「実は伊須来に五万円返さなきゃならないんだ。だけど僕の全財産は五万三千円
で伊須来にお金を返すとどうしても買いたいゲームソフトが買えなくなるの。どうしたらいいのかなはやく返さないと母ちゃんに言いつけられちゃうんだ。」

「困ったねえ…」

「前材さん、どうしたら良いかな。」

前材はゲームを買うのはやめなさいなどという考えは全く
思い浮かばなかったようだ。
くしゃくしゃと頭を掻きながら前材も必死になって考えた。どうにもこの前材も明側の人間のようだ。
必死に悩んでいると前材の脳裏にある人のまじめな顔が浮かんだ。
「そうだ…我材（わがざい）さんに相談するのも有りだな。」
明と自分に言い聞かせるようにわざと声に出していった。