たくさんの恋の魔法(短編)

「え、うん…。…ごめん、だめだった?」


「いや、俺が勝手に貸しただけだから、むしろこっちが申し訳なくなるっていうか…」


「え…。で、でも私は…嬉しかったよ?深沢くんがハンカチ貸してくれたの」


「ーーっ…。そ、そっか…」



深沢くんは照れたようにそっぽを向いた。


耳まで赤いのが、なんだか可愛い。


正直まだ失恋は引きずっているけど、ほんのちょっとでも心が軽いのは、もしかしたら深沢くんのおかげかもしれない。


ありがとう、深沢くん。


私は心の中でそっとお礼を呟いた。