久しぶりに、部活が休みで高校から帰っている最中、幼馴染で友達の直哉が俺に言った。
「僕、今度引っ越すんだよね。」
「…そっか」
何となく、そんな気はしていた。最近、おまえの家ゴタゴタしてたし、引越しうんぬん聞こえてたし。
「…反応薄くない?」
なんか、少しショックだったっぽい。
俺だって、驚いてないわけじゃないし、自分の思い違いであって欲しかった。
でも…やっぱり、
「引越しちゃうんだな。」
「え、ほんとにそれだけ?」
「なわけねーだろ」
「…なんか、ごめん」
プッと同時に吹き出した。
あー、友達だなって思った。
あー、…………。
「え、どーした?」
「何が?」
「お前、泣いて…」
直哉に話しかけられてやっと気づいた。俺、涙出てたんだな。
「はは、なんで…俺、普段全然泣かないのに。」
直哉は、俺と向き合って、
「ありがとう、海斗」
急に俺の名前を呼んだ。なんで、おまえも泣いてんだよ。
てか、よく考えたら、これで二度と会えないわけじゃないんだから、こんな悲しむ必要ないんじゃないか。
お互いに涙を拭ってたら、直哉が口を開いた。
「もしかして、二度と会えないわけじゃないから心配いらないって思ったりしてる?」
なんで分かるんだよ。ホントそーゆーとこ流石だな。
幼馴染なだけある。
「…だったら?」
「多分、二度と会えないよ」
…は?
「なんで、そう言いきれるんだよ。」
直哉は、真顔になったかと思ったらすぐ笑顔に戻って
「なんでもないやー」
その後は、いつも通りの会話をして帰った。
その時は、“二度と会えない”の意味を理解していなかった。
その一週間後、引越し当日。
空港で、俺達は少し昔の話をした。
「そーいえば、海斗さ、小さい頃スーパーヒーローなりたいとかずっと言ってたよね」
「お前なんで、覚えてんだよ。」
「いやー、あの頃は可愛かったなー、今と違って」
「おい。」
そんなしょーもない話をしてたら、あっという間に出発時間。
「じゃ、そろそろ」
「うん、じゃーな、直哉」
その時、直哉の目は微かに潤んでた。
俺はそのまま、背を向けて歩きだした。
そしたら、急に
「海斗ー!ホント楽しかった、ありがとう!!」
今までに聞いたことないくらいのでかい声でそう言われた。
待って、俺めっちゃ白い目で見られてんじゃん!
とりあえず、背を向けたまま軽く手を振った。
その後、直哉を乗せた飛行機は出発した。
そーいえば、どこに行くとか、なんで引越すとかなんも聞いてなかった。
まぁ、電話とかで聞けばいっか。
でも結局、俺は部活が忙しくて、直哉に連絡しないまま気づいたら半年が過ぎていた________
ある日、俺はいつものように高校から家に帰ってくると、母親が物凄い形相で俺に言った。
「直哉君、死んだって。」
俺は、訳が分からなくなった。
「何言ってんだよ。。。そんな、笑えねぇ冗談」
「冗談なわけないでしょ!」
母は泣きじゃくりながら床に倒れ込んだ。
「う、嘘だ…嘘だ、うそだ、うそだぁー!!!!」
信じられない。直哉が…
俺はしばらく正気でいられなかった。
直哉の葬儀が済み、俺は直哉の両親に話を聞いた。
「直哉は、なんで死んだんですか?」
「…。」
しばらく沈黙が続いた。
その後、ゆっくり教えてくれた。
「直哉は、…ずっと、心臓を患っていて…最近は、もう手遅れだと…その時、ようやく手術をして下さる病院が見つかって…最後の、賭けでした…」
直哉の両親は、泣き崩れた。
ずっと、知らなかった。まさか、直哉が…
「なんで、ずっと言ってくれなかったんだよ…!」
俺も、感情を抑えることが出来なくなった。
今までにないくらい、一生分の大粒の涙を流した。
あれから、随分と時が過ぎた。
今日は、直哉の誕生日だ。
直哉の誕生日まで墓参りに来るのは俺と直哉の両親くらいだ。
そこで、俺はまたしょーもない話をする。
「こないださ、上司に物凄い怒られて。本当大変だったんだぞ。」
「…まあ、俺が書類提出間に合わなかったからなんだけど」
そんな事を、1人で永遠と喋り倒す。もはや毎年恒例だ。
「海斗君」
後ろから声を掛けてきたのは、直哉の母親だ。
「いんだよ、そこまでしなくても」
「いえ、自分がやりたくてやってるんで。」
そうだ、話しても話しても話し足りない。
まさか、あれが最後の会話になるなんて思ってなかったんだから。
「あ、そーだ!ずっといつ渡そうか悩んでたんだが、今なら」
と、直哉の親父さんがある物を俺に渡した。
それは、一通の手紙だった。
「これ…」
「直哉が生前書いてたみたい。引き出しから出てきたの。よかったら読んでみて」
その手紙には、こう書かれていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
海斗へ
手紙なんて初めてだから、ちょっと照れくさいです笑
頑張って書くんで読んでください。
初めに、今まで病気のこと黙っててごめん。
僕の中では、1番仲がいいって思ってる海斗に、そんな重い話どうしても出来なかった。
だって、海斗優しいから、きっと僕より思い詰めちゃう。
ずっと、いつも明るくて意外と思いやりがある海斗でいて欲しかったんだ。
覚えてる?
僕、小さい頃結構人見知りで、友達がなかなか出来なくて、その時、1番最初に話しかけてくれたのが海斗だった。
あの時、物凄い嬉しかった。
なんか、ずっと「俺はスーパーヒーローになるんだ!」とか言ってて正直コイツ何言ってんだって思ってたけど、
その時からずっと、君は僕にとってのスーパーヒーローでした。
最後に、こんななんの取り柄もない僕に優しくしてくれてありがとう。
友達でいてくれて、本当にありがとう。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
俺はなんていい友達を持ったんだろう。
あぁ、俺ってこんなに泣き虫だったっけ。
気づいたら、泣いていた。
後ろで直哉の両親も泣いていた。
良い奴過ぎるだろ。
なんの取り柄もないなんてことねーだろ…
あれ、裏にもなんか文字があった。
【P.S.ちなみに僕小さい頃なりたいって言ってたものってなにか覚えてる??】
まったく。覚えてるよ。ずっと。
元々、スーパーヒーローなりたいって思ったきっかけがおまえなんだから___________
『直哉…だっけ?お前なんでずっと本ばっか読んでんだよ。』
『…お医者さんになりたいんだ、病気の皆を助けて、皆を笑顔にしたいんだ』
『…ふーん、皆を助けるか。…かっこいいじゃん』
「僕、今度引っ越すんだよね。」
「…そっか」
何となく、そんな気はしていた。最近、おまえの家ゴタゴタしてたし、引越しうんぬん聞こえてたし。
「…反応薄くない?」
なんか、少しショックだったっぽい。
俺だって、驚いてないわけじゃないし、自分の思い違いであって欲しかった。
でも…やっぱり、
「引越しちゃうんだな。」
「え、ほんとにそれだけ?」
「なわけねーだろ」
「…なんか、ごめん」
プッと同時に吹き出した。
あー、友達だなって思った。
あー、…………。
「え、どーした?」
「何が?」
「お前、泣いて…」
直哉に話しかけられてやっと気づいた。俺、涙出てたんだな。
「はは、なんで…俺、普段全然泣かないのに。」
直哉は、俺と向き合って、
「ありがとう、海斗」
急に俺の名前を呼んだ。なんで、おまえも泣いてんだよ。
てか、よく考えたら、これで二度と会えないわけじゃないんだから、こんな悲しむ必要ないんじゃないか。
お互いに涙を拭ってたら、直哉が口を開いた。
「もしかして、二度と会えないわけじゃないから心配いらないって思ったりしてる?」
なんで分かるんだよ。ホントそーゆーとこ流石だな。
幼馴染なだけある。
「…だったら?」
「多分、二度と会えないよ」
…は?
「なんで、そう言いきれるんだよ。」
直哉は、真顔になったかと思ったらすぐ笑顔に戻って
「なんでもないやー」
その後は、いつも通りの会話をして帰った。
その時は、“二度と会えない”の意味を理解していなかった。
その一週間後、引越し当日。
空港で、俺達は少し昔の話をした。
「そーいえば、海斗さ、小さい頃スーパーヒーローなりたいとかずっと言ってたよね」
「お前なんで、覚えてんだよ。」
「いやー、あの頃は可愛かったなー、今と違って」
「おい。」
そんなしょーもない話をしてたら、あっという間に出発時間。
「じゃ、そろそろ」
「うん、じゃーな、直哉」
その時、直哉の目は微かに潤んでた。
俺はそのまま、背を向けて歩きだした。
そしたら、急に
「海斗ー!ホント楽しかった、ありがとう!!」
今までに聞いたことないくらいのでかい声でそう言われた。
待って、俺めっちゃ白い目で見られてんじゃん!
とりあえず、背を向けたまま軽く手を振った。
その後、直哉を乗せた飛行機は出発した。
そーいえば、どこに行くとか、なんで引越すとかなんも聞いてなかった。
まぁ、電話とかで聞けばいっか。
でも結局、俺は部活が忙しくて、直哉に連絡しないまま気づいたら半年が過ぎていた________
ある日、俺はいつものように高校から家に帰ってくると、母親が物凄い形相で俺に言った。
「直哉君、死んだって。」
俺は、訳が分からなくなった。
「何言ってんだよ。。。そんな、笑えねぇ冗談」
「冗談なわけないでしょ!」
母は泣きじゃくりながら床に倒れ込んだ。
「う、嘘だ…嘘だ、うそだ、うそだぁー!!!!」
信じられない。直哉が…
俺はしばらく正気でいられなかった。
直哉の葬儀が済み、俺は直哉の両親に話を聞いた。
「直哉は、なんで死んだんですか?」
「…。」
しばらく沈黙が続いた。
その後、ゆっくり教えてくれた。
「直哉は、…ずっと、心臓を患っていて…最近は、もう手遅れだと…その時、ようやく手術をして下さる病院が見つかって…最後の、賭けでした…」
直哉の両親は、泣き崩れた。
ずっと、知らなかった。まさか、直哉が…
「なんで、ずっと言ってくれなかったんだよ…!」
俺も、感情を抑えることが出来なくなった。
今までにないくらい、一生分の大粒の涙を流した。
あれから、随分と時が過ぎた。
今日は、直哉の誕生日だ。
直哉の誕生日まで墓参りに来るのは俺と直哉の両親くらいだ。
そこで、俺はまたしょーもない話をする。
「こないださ、上司に物凄い怒られて。本当大変だったんだぞ。」
「…まあ、俺が書類提出間に合わなかったからなんだけど」
そんな事を、1人で永遠と喋り倒す。もはや毎年恒例だ。
「海斗君」
後ろから声を掛けてきたのは、直哉の母親だ。
「いんだよ、そこまでしなくても」
「いえ、自分がやりたくてやってるんで。」
そうだ、話しても話しても話し足りない。
まさか、あれが最後の会話になるなんて思ってなかったんだから。
「あ、そーだ!ずっといつ渡そうか悩んでたんだが、今なら」
と、直哉の親父さんがある物を俺に渡した。
それは、一通の手紙だった。
「これ…」
「直哉が生前書いてたみたい。引き出しから出てきたの。よかったら読んでみて」
その手紙には、こう書かれていた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
海斗へ
手紙なんて初めてだから、ちょっと照れくさいです笑
頑張って書くんで読んでください。
初めに、今まで病気のこと黙っててごめん。
僕の中では、1番仲がいいって思ってる海斗に、そんな重い話どうしても出来なかった。
だって、海斗優しいから、きっと僕より思い詰めちゃう。
ずっと、いつも明るくて意外と思いやりがある海斗でいて欲しかったんだ。
覚えてる?
僕、小さい頃結構人見知りで、友達がなかなか出来なくて、その時、1番最初に話しかけてくれたのが海斗だった。
あの時、物凄い嬉しかった。
なんか、ずっと「俺はスーパーヒーローになるんだ!」とか言ってて正直コイツ何言ってんだって思ってたけど、
その時からずっと、君は僕にとってのスーパーヒーローでした。
最後に、こんななんの取り柄もない僕に優しくしてくれてありがとう。
友達でいてくれて、本当にありがとう。
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俺はなんていい友達を持ったんだろう。
あぁ、俺ってこんなに泣き虫だったっけ。
気づいたら、泣いていた。
後ろで直哉の両親も泣いていた。
良い奴過ぎるだろ。
なんの取り柄もないなんてことねーだろ…
あれ、裏にもなんか文字があった。
【P.S.ちなみに僕小さい頃なりたいって言ってたものってなにか覚えてる??】
まったく。覚えてるよ。ずっと。
元々、スーパーヒーローなりたいって思ったきっかけがおまえなんだから___________
『直哉…だっけ?お前なんでずっと本ばっか読んでんだよ。』
『…お医者さんになりたいんだ、病気の皆を助けて、皆を笑顔にしたいんだ』
『…ふーん、皆を助けるか。…かっこいいじゃん』