「あなたを好きになるって、私初めから気づいてたのかも。」
吹奏楽部の放課後練習の音を聴きながら、教室の窓から空を見上げて呟く【佐藤りあ】


〜教えてください先輩。この気持ちは恋ですか?〜
1話ーひな高入学式ー

春休みを終えて、久しぶりに電車に揺られる朝。
今日から日向高校、ひな高の生徒になるんだ―!
そんなことを考え、胸を踊らせていた。

―この後新入生は各々のクラスでS HRがあるので、担任の先生の指示に従って退場してください。ー
1年の教務主任を担当すると言っていた先生がマイクにむかってハキハキとそう言った。
このまま帰れると思っていたので、私を含めた新入生達が少しため息を漏らす。
同じクラスの名前も知らない女子と、長いよ〜帰らせて〜と無駄話をする。
私のクラスは6組。クラスメイトの顔を確認しようと、教室に移動する途中で周りを少し見渡す。
ああ、やっぱり。この高校は聞いていた通り女子が多い。
おそらくそれは制服が可愛いというのも関係しているのだろう。そんなことを考えているうちに教室に着く。
みんな、自分の出席番号を確認して自分の番号が振られた席に着いてゆく。
(私の席は―――あった、19番。)
佐藤という苗字の割に出席番号が後ろだな、などとくだらないことを考えていると、入学式で6組の担任を担当すると紹介されていた綺麗な先生が教室に入ってきた。
「初めまして。今日から1年6組の担任になる、齋藤 実里です。これから1年間、よろしくお願いします!」
私を含めたクラスメイトが「よろしくお願いします!」とバラバラに言う。
思ったよりもみんな元気そうでよかった、と私は少し安堵する。
そのあとは提出書類の説明をされたり、クラスブックと表紙に記された冊子を渡されたりした。
いつの間にか廊下に新入生の保護者の人たちがずらりと立っていた。
そしてSHRが終わり、「保護者の方々にも提出物や注意事項などの説明があるので、生徒は廊下に。保護者の方々はご自身のお子様の席にお座りください。」と齋藤先生が言った。どのクラスの生徒も廊下に出され、待機をしていた。私は近くにいたクラスメイトの子達に中学生のときと同じテンションで「私、佐藤りあって言います!これから同じクラスだね〜よろしく!!」と、少し自己紹介をした。するとクラスメイトの女子達も次々と名前を教えてくれた。優しそうな人達ばかりで少し安心した。そのまま続けて、「みんな、LINE交換大丈夫ー?」と聞くと、自己紹介をしていない女子達も話し声が聞こえたのか、「私たちもいいー!?」と集まってきた。「もちろんだよー!!」と返すと、そこからはもうLINE交換大会になってしまった。私は元々、初対面の人と話すのが割と得意で、友達はそこそこ多い方だったので、それを活かして女子ともすぐに打ち解けられた。保護者への説明も終わり、そのまま日向高校からは少し遠い家に帰った。

「夜ご飯できたよー!」と声が聞こえた。
家に着いてから、少し気疲れしてしまったため寝てしまっていたようだ。夜ご飯を食べ終わった私は、ぼーっとしながら考え事をしていた。日向高校には私と同じ中学から来た子が少ない。そういう新しい環境だからこそ、中学の時よりも自分を表現しやすい。これからのひな高生活、楽しく過ごせそうだ―!