「怖い夢を見た」

そう言いながら君が珍しく目覚めて早々
泣きながら俺にくっついてきた。

どんな夢を見たんだろう
気になるけど、思い出させるのも悪いからなぁ、

『怖かったんだ』
「うん」
『そっか』

君が語りたかったら語ればいいから
俺はただそっと
キミを大事に抱きしめるね

ぎゅっと力を込めた腕の中
消え入りそうな声で呟く

『貴がもし、いなくなったら…私生きていけないね』

もし、

だなんて


例え話が苦手な君には珍しいフレーズだね
言葉にしたら本当になる気がするから
良くも悪くも例え話はしたくないってよく言うのに

でも今はきっと、そんな気分なんだね
だとしたらあえて、僕も、例え話を君に送ろう

『もしも… 俺が明日、死んでしまったとして』
「やだ」
『もしもだよ。でも大事なことだから聞いて欲しい』


好きだからこそ、君に伝えたいんだ


『生き返るなんて無理だし、風になって見守るなんてのも、無理だ。たぶん。』

そうなってみないと分からないけど
たぶん、ね。

『でも俺が、死んでも生き続けられる場所があるとすれば、残された人の記憶の中だと思うんだよね』
「記憶…?」
『そう、記憶』

それも、永遠ではないだろうけど

『どんな記憶が残るか。
俺との幸せだったところか、ダメだったところか。
残された人がたまに思い出して語る。
そんな中でしか生きられないんだよね』

だから、せめて… 前向きに俺を思い出して欲しい

『俺がいなくなったせいで、お前が生きていられなくなるなら、俺はその程度の男なんだ。
俺を思い出して、" よし頑張ろう " そう思えるような男になるから、どうか、ちゃんと生きて欲しい』

悲しみにくれたあとは、少しずつ、進んで欲しい
降り止まない雨がないように、空は必ず晴れるように


今、君に伝えたいこと。

どちらかが欠けたら
もう片方がダメになるような
依存し合う愛はいらない

どちらかが欠けたら
その分まで頑張ろう
そんな高め合う愛になりたい

『だからもしも、俺が死んだら。
泣くだけ泣いたあとでいい。
顔を上げて、前を向いて、星を見上げて

その時お前がキラキラ光る星に俺を重ねて
俺を思い出して笑えるよう

ちゃんと、今生きて
楽しい思い出が残るよう
お前をいっぱい幸せにするから』

腕の中で頷く君に
これからも愛を… 注ぐから。